20年以上続く
絵手紙との出会い

学区内にお住まいの絵手紙を20年余り続けていらっしゃる
牧田さん宅へ絵手紙についてお話を伺ってきました。

私もみんなを励ましたい

牧田さんがまだ岐阜県各務原市にお住いの時、ご友人が絵手紙の先生をされていた教室に通われていたそうです。
ある日、知人からの絵手紙の言葉が牧田さんの励みになったそうです。
それから、「私もみんなを励ましてあげたい!」という気持ちが、今でも絵手紙を続けているきっかけとなったそうです。

学区の「作品展」への出展で喜んでいただきました

絵を描く気持ちは何か決め事はあるのですか、と聞いてみたところ
「枠を決められてしまうと・・・(苦笑)
描くにも波があります。それでも絵を描いていると、どんどん貯まってしまい、お友達にもあげるのですが増えるばかりです。
学区の作品展を長年取りまとめていらっしゃる『おしゃべりサロン』の臼井さんに、描きためた作品を使ってくださいと渡しました。
それらを作品展に展示したら、皆さんが喜んで持っていかれたと聞いてうれしいかったです。欲しい方には定期的に送っています。」

【毎日が新しい日なんです】

 そういえば、学区の『おしゃべりサロン作品展』で牧田さんの絵手紙と出会い、その中の1枚「毎日が新しい日なんです」という絵手紙に感銘を受けた人のお話を思い出します。

 その絵手紙を部屋の目につく場所に飾り、毎日「ああ、そうだな、毎日新しい日だから昨日の嫌なことがあっても、また今日は新しい一日が始まるんだな」と、絵手紙の言葉が励みになっているそうです。

 牧田さんは「そうですね、毎日一歩前進していかなくちゃですからね」と、言葉を思い出しながらおっしゃっていました。

下手でもいい、
感じたまま描けばいい

次に絵手紙について聞いてみました。
「絵手紙というものは、はがきサイズの大きさの用紙に絵を描いて、短い言葉や文章を空白の箇所に書いて相手に送るものです。
 その絵はさまざま。実際に見た風景やもの、花だったり動物だったり。また図鑑などをみて描いてみたりといろいろな方法で描きます。でも上手じゃなくていい。下手でもいい。感じたまま描けばいいと思っています。」

牧田さんはさらに詳しく。
「絵手紙の絵は顔彩※1で描きます、水彩とは違います。輪郭は正式には青炭で描きますが私は筆ペンで描きます。どちらも下書きなしで描くのです。文章は新聞とか冊子とかの印象に残った文章をメモしておいたり、自分で考えたりします。絵と文章は合うものもあれば合わないものもありますが、そこはこだわりません。その時の気持ちです。」とあくまでも無理せず、気張らずに自然体のまま描くことが長く続けてこられた理由だと納得できました。
 ただ、牧田さんはハガキの大きさに満足がいかず、絵手紙の基本を1年半ほど先生のもとで習い、その後は我流でハガキよりも大きなサイズで描いています。絵手紙という概念にあまりこだわりなく、絵も大きく、言葉も沢山書いたりするそうです。牧田さんは目を輝かせ、絵を描いている時間が本当に楽しいことをさらに語ってくれました。

※1)顔彩とは、色をつけるための顔料に、顔料を紙に固着するための糊の役割を担う膠(にかわ)やでんぷんなどを加えて練り、容器に入れてかんそうさせた固形の絵の具のこと。一般的に日本画に使用される画材です。水で溶かすだけでしようできるので、手間が少なく、水彩画のような感覚で手軽に日本画を楽しんだりできます。

障子紙との出会い

「大きさの次は紙の厚みが欲しくなり、ある時、障子紙の余りを見つけたのです。描きだしてみたらすごくいい質感です。障子紙はある程度の大きさや形が自由に調整でき、いろいろな小細工ができます。障子紙のザラザラな質感も絵に活きてきて、色を塗るときの質感がおもしろくやみつきになりました。」
牧田さんが描いた障子紙は、色画用紙に貼り額縁に入れて素晴らしい作品となります。
最近では背景の色画用紙にもこだわりがあるそうで、気に入った色を追い求めてあちこちと探し回ることもあるそうです。

【無】になれる時間が欲しかった

 また「絵手紙はどんな時に描きますか」との質問に、牧田さんは長い年月を思い出しながら語ってくれました。
「絵手紙を習い始めたとき、主人が脳梗塞で倒れました。その後、介護生活が始まったのです。だんだんと昼も夜もない忙しい中、主人が寝ている時などに、『あ!何か描きたい!』と思ったんです。
【無】になれる時間が欲しかったのです。

絵を描くことで無心になれる。介護で疲れたとかつらいとかの気持ちを忘れてしまえる。絵手紙を描くということがあってとても助かりました。14年の介護は鬱になってしまいそうだったから。気分転換ができたから絵手紙に助けられました。
無趣味よりは何かあった方が絶対にいいです。14年はほんとうに長かった・・・。」

牧田さんは描いた絵手紙を手紙として使われることがあるのでしょうか。
「はがきで出すこともあります。年賀状は手書きで全部出していましたよ。最初のころは100枚ほど出していました。その人を思いすべて違う絵を描き、その人に合った言葉を書きます。今は肩にリュウマチを患い枚数が減り印刷になっちゃいましたけど」と少しはにかみながら語ってくれました。

年賀状が届いた人の反応はどうでしたか。
「『ありがとう』の言葉と一緒に近況報告をいただきます。そんなこといいのに。私が好きで出しているから。電話だと話すことがたくさんあって長電話になってしまい、
絵手紙だと思うように描いて、はがきが残るのでこちらの方がいいと思うのです。」

みんなを励ましたいという気持ちが いつの間にか自分が励まされていることに・・・

今後の目標などはありますか。
「現状維持でしょうかね(笑)
時間があったらコツコツと絵が描けたらいいなと。目標を決めてではなく少しずつ、受け取る人がとにかく喜んでくださるということなら、『こんなうれしいことなないです』という気持ちで描いています。
字を書くのもまたいいのです。長い文章を書いたり、短い言葉で書いたりすると、その言葉によって絵が活きてきたりするのです。」

絵手紙を描くことで送る人へお互いにがんばろうと励まし、いつの間にかそれが自分自身へ向けての激励の言葉でもあったんだと、とてもうれしそうに笑顔でお話してくださいました。

そして取材終了後に、すてきな絵手紙の中から1枚の作品をいただきました。

牧田さん、ありがとうございました。これからもお元気で作品を作り続けてください。

取材・文:むらなか
写真・構成:かとう